京都大学工学部精密機械学科卒業。自動車エンジニアを目指すべく、大学では機械工学を学ぶが何を間違ったか(株)リクルート入社。カーセンサーの編集に携わる。カーセンサー関東版副編集長を経て、現在カーセンサー編集アドバイザーを務める。フリーランスのライターとしても活動中。ほぼすべての新型車試乗をこなす。
AMGと名のつくメルセデスをひとことで言い表すならば、それはよりエクスクルーシブでハイパフォーマンスなM・ベンツ、ということになるでしょう。M・ベンツの機能性や快適性を損なうことなく、めちゃくちゃ速く、安全に走れる!
現在、AMG有限会社は完全にM・ベンツ(ダイムラークライスラー)の傘下にあります。その生産台数も、今や年間2万5000台!車両価格の平均が少なくとも10万ユーロはいくでしょうから、大きな売り上げを誇っています。
日本市場における販売台数も、ここ数年はうなぎ上り。ダイムラークライスラージャパンが直接扱い始めた’00年以降、およそ4倍にまで膨れ上がりました。今や日本市場の位置づけは、本国ドイツと同じぐらい。とっても大事なお客様、というわけです(最大はアメリカで約半分を買っていく)。
絶好調のAMGブランド、というわけですが、昨年のフランクフルトショーでは歴史的なエンジンを発表しています。AMG史上初となるオリジナル設計の6.2L V8DOHC自然吸気エンジンで、それを積んだCLK63とML63に、スペインはグラナダ郊外で試乗してきました。
6.2Lなのに「63」という表記に気づいて、あ、そうか、なるほどね、と合点のいった方は相当なM・ベンツ好き者ですな。AMGはこの歴史的なエンジンを積むクルマのネーミングを考えるに当たり、AMG伝説の起点となる、あるクルマの名前を思いついたのです。それは、71年のスパ24時間レースでクラス1位、総合2位を獲得し、一夜にしてAMGのテクノロジーを世界に知らしめた300SEL6.3改6.8、でした。
これまでのAMG車には量産エンジンをベースに改良を加え、過給器でパワーを出すという手法がとられていましたが、63エンジンでは一から新設計です。レース技術や最新テクノロジーを駆使し、フラットトルクならが高回転型という、新しい価値観を生み出すに至りました。
試乗したのは、CLK63とML63。前者は481HP、後者は510HPと出力こそ異なりますが、基本的には同じエンジンです。ちなみにこの 63エンジン、今後はCLS63やE63、さらにはR63、GL63という風に、順次、他モデルへも展開される予定。これまでの55自然吸気は近々に廃止、55コンプレッサーは改良されてSLやGに積まれることになります。
63エンジンのフィーリングはどうだったか。正直言うと、55コンプレッサーエンジンに初めて乗ったときのような、過激な感動はありませんでした。拍子抜けするぐらいに“ああ、こんなもんか”と。メチャッ速のSL65やS65(こちらはV12ツインターボで612ps!)に体が慣れていたからかもしれません(笑)。
一言で言うと、どこまでも一直線に伸びていくような、天井知らずの加速感。過給器付きのようにいきなりドカーンとくることもないし、カリカリチューンの自然吸気エンジンのように高回転域でカムに乗るような演出もない。フラットトルクで、ウルトラスムースに加速します。
で、よくよくスピードメーターを見てみると、これがもう尋常じゃないスピードに知らないうちになっているのです。完全に感覚麻痺。速く走っているってことが、ぜーんぜん分からない。ええ、高速道路ならばどこでも必ずあっという間にオーバー200km/h(控え気味)でしたから。
そういう意味では、非常にマニアックなエンジンなのかも知れません。乗れば乗るほどに味わい増す、というか。55コンプレッサーのドッカンな加速は確かにスリリングですけれど、すぐに飽きてしまうんです。新しい63エンジンなら、そうそう飽くこともないでしょう!
個人的には、F1ペースカーに使用される、ワイドフェンダー仕様のCLK63なら、とっても欲しいなあ。CLK−DTMが限定販売されましたが、ひょっとして、F1ペースカーモデルも限定で出るかも知れませんね…幾らするのか見当もつきませんが。
工場見学もしてきましたので、追ってご報告します。
そうそう、中古車物件も是非ご覧くださいね。意外に値落ちしている物件もあるものです。決して遠い存在ではありませんよ。