京都大学工学部精密機械学科卒業。自動車エンジニアを目指すべく、大学では機械工学を学ぶが何を間違ったか(株)リクルート入社。カーセンサーの編集に携わる。カーセンサー関東版副編集長を経て、現在カーセンサー編集アドバイザーを務める。フリーランスのライターとしても活動中。ほぼすべての新型車試乗をこなす。
AMGの本社&ファクトリーは、ストゥットガルトからクルマで小一時間の小さな町、アファルターバッハにあります。AMGモデルのエンジンを見るとサイン入りの小さな金属プレートが貼られていますが、そこにAMG社の社章があってリンゴの木が描かれているのが見えるはず。なぜにリンゴか。アファルターバッハという地名が、ドイツ古語で“小川の近くのリンゴの木”って意味なんですね。
まあ、ホンマもんの田舎町です。そこに突然、近代的な低層ファクトリーが見えてきて、しかも拡張しっぱなしといった様相。“ああ、元気があるんだな”とまずは施設全体の雰囲気で納得した次第。
現在、AMG本社では700人弱の人が働いていて、その約半数が開発者なのだそう。業務内容は、エンジンを中心とした車両の企画設計、エンジン組み立て、カスタマイズ、メンテナンス・リペア、レース車両の製作・メンテナンス、という感じ。メインはもちろん、AMGモデル用のエンジンアッセンブルで、日に100機の生産能力があります(単純に計算すると年産2.4万機ですから、昨年のAMG車販売台数の2.5万台とほぼ一致)。
エンジン組み立て工場を見学しました。AMGが認めたエンジン組み立て工は全部で50人。3年半の実務経験とエンジニアの国家試験を突破し、AMGによる筆記と実技の試験をパスした後、6週間の試用期間を経て正式に採用されるという厳しさです。
8気筒と12気筒&SLR用V8とで組み立てフロアが別々になっていますが、選ばれし50人のマイスターは基本的にどのエンジンも組み立てることができます。一人のマイスターがクランクケースを部品棚から取り上げることから始まって、最後まで一人の責任で組み上げられます。1エンジン1マイスター。その証が、エンジンカバーに貼られたサイン入りのプレートというわけ。
一機あたりに要する組み立て時間は、V8で2時間15分、V12で5時間、SLR用V8で7時間。決められたタクトタイムはなく、早朝6時過ぎから好きな時間に仕事を始めるのだそう。不良品の出る確率は、なんと1万機に2つか3つ!
V12の組み立てフロアにはハンマーモーターをはじめ、歴代のAMGエンジンがずらり。珍しいところでは、仏や伊で人気を博したディーゼルエンジン(C30)なども陳列されています。
隣接の車両ファクトリーでは、G55やSL55などが特別仕様への改装を待っています。ここでは顧客のスペシャルオーダーに応じて、内装の張り替えや特別なオーディオシステムの装着を行うようです。内外装がピンクのSL55なんてのもあったらしい!
取材時に製作されていたスペシャルオーダー車で目立っていたのが、SLK55のレーシング仕様。リトラクタブルルーフを取っ払ってロールケージを張り、150kgの軽量化。安全タンクやスポーツサス&ブレーキを装備したサーキット走行用のSLK55を、なんと35台も注文したのはシンガポールの投資家…。ワンメークレースでもやるんでしょうか、金持ち募って(シンガポール筋に確認したところ、ワンメークレースを開催するとか。参加費毎レース1万5000ユーロだそう…)。
AMG社長によれば、今後これまでのような拡大路線は取らず(といってもCクラス以上のベンツには必ずAMGを用意するというから、ラインナップは増えるはず)、CLK−DTMのようなスペシャルなクルマをいろいろ用意していくことになる、ということでした。
あっ、ムービーではDTM観戦シーンもあって、ジャン・アレジのインタビューもありますよ!是非是非、ご覧になってみてくださいね。もちろん、中古車物件も見てみてください。