京都大学工学部精密機械学科卒業。自動車エンジニアを目指すべく、大学では機械工学を学ぶが何を間違ったか(株)リクルート入社。カーセンサーの編集に携わる。カーセンサー関東版副編集長を経て、現在カーセンサー編集アドバイザーを務める。フリーランスのライターとしても活動中。ほぼすべての新型車試乗をこなす。
スーパーチャージャー+ターボチャージャー。ターボやウィングが憧れのアイテムやった僕等世代には、よだれもんの響きなんだけど、そんな風に伝わると間違いなんでしょうね…、新しいTSIエンジン。これVWの新しい提案。ひとことで言えば、エンジンのダウンサイジングです。
日本でゴルフクラスといえば、今や1.8ー2lエンジンが相場でしょう。1.6lでギリかな。昔はも少し小さかったわけだから、大きくなる一方だったボディサイズに比例して、仕方なく排気量をデカくしてきたって背景がある。それを、そろそろやめませんか、と。
新しいエンジン、実は1.4l。排気量志向の強い日本じゃ、“1.4lで300万円かいな!”って言われるんやろけど、そこがミソ。その代わりにツインチャージャーで武装して、力ってことでは2.4l自然吸気並みにしたぜ、と。理屈じゃ分かるけど、って人も多いと思います。
疑問その1:ターボとかって燃費悪いんちゃうん?
いえいえ、本来ターボって効率がいいはずなんですね。けれど、圧縮比や燃料噴射のコントロールなど、技術的にクリアできない分野がいくつかあって、ターボは燃費悪い、というイメージに。勢い、燃費なんてどうでもいいや系スポーツカーにしか使われないもんだから、余計に悪いイメージが拡がりますでしょ?ところが、最近の直噴技術や制御技術の進化で、ターボに適した環境が作れるようになったため、今や理想のアイテムとして復権しつつあるんですな。BMWもツインターボ使ったりしていすが、今後この傾向はさらに強まるハズ。
疑問その2:ゆうても1.4lエンジンじゃ走らんやろ?
いえいえ、走ります。それが証拠に、私、このエンジンを2.3トンのVWマルチバンに載っけたクルマにも乗ったことがあるんですが、これがよう走る。信じられないぐらいに、走る。マルチバンから見れば、ゴルフなんて子供みたいなもんですよ。少なくとも、これまでの2lなんて目じゃありませんや。スーパーチャージャー独特のヘンな音もしないし、過給のつなぎ目も感じない。制御は素晴らしいです。
疑問その3:だったらみんなやったええんやないの?
いえいえ、みんなやると思いますよ、これから。どこのメーカーも、もちろん日本車も、考えてます。ガソリンエンジンの主流は、小排気量ハイパワーの時代に、必ずなりますから。
というわけで、このTSIエンジン。直噴ディーゼルターボで一歩先を走っていたVWならでは、という見方もできますね。彼らの目標は、ディーゼルとガソリンの結婚。現在開発中のCCS(combined combustion system)などいろいろ見えてきていますが、TSIはその前哨戦ってわけ。
彼らにとっちゃ、別にガソリンエンジンをいじくりまわさなくても良かったはず。けれども、近未来のことを考えると、インフラの整った現行の内燃機関をおろそかにするわけにはいかないんです。モビリティそのものが、多くの人の不幸につながる可能性がありますから。
VWの良心というか、もう本能でさね。なんでもやっておこう、みたいな。だから1001馬力のブガッティヴェイロンなんかも作っちゃうわけで。そうやって研究開発してきた集約が市販のものとなって提案される。モノ造りの基本かも知れません。
ゴルフTSI。GTグレードだといっても、正直、決して安いとは思いません(前から高かったのかも知れない)が、ガソリンエンジンの新しい価値観を知るという意味では、ここ10年で最高の選択肢かも知れませんよ。多くの可能性を秘めたエンジンであることは、間違いありませんから。