京都大学工学部精密機械学科卒業。自動車エンジニアを目指すべく、大学では機械工学を学ぶが何を間違ったか(株)リクルート入社。カーセンサーの編集に携わる。カーセンサー関東版副編集長を経て、現在カーセンサー編集アドバイザーを務める。フリーランスのライターとしても活動中。ほぼすべての新型車試乗をこなす。
ご覧の通り、もう”ダブルアールエックス”なインプレッサじゃあ、ありません。一部の、熱狂的な走りマニア、ラリーファンのためのドライバーズカーから脱却したい!そういう願いが、このフルモデルチェンジには込められているんだと思います。
一方、これでいわゆる欧州Cセグメント相当の「グローバルコンパクトカー」になったわけですが、こうなると多くのメジャーブランドとがっぷり戦うことになります。WRXという伝家の宝刀は抜けなくなった、と。 だからインプレッサというコンパクトカーを買う理由がどこにあるか、が大事になってきます。
もちろん、秋にはハッチバックベースのラリーベースモデルSTI が出るでしょうが、以前のようにベースモデルが貧弱なタイヤを履いたように見えるといった割を食う話がなくなりました。別個で開発されているからですね。ラリー好き、WRX好きは、とりあえず今回のフルモデルチェンジを“無視”していただいて結構、みたいなノリで。
そう思って見れば、スタイルも相当頑張ったんじゃないですか。何となくトヨタカルディナを短くしたか、ハリアーを低くしたようなカタチに見えなくもないですが、Cピラーあたりの造詣など、個性的な部位もあって。
写真で見たときは狸さんみたいだなと思ったフロントマスクも、実物はけっこうキリリとしていてなかなかいい構え。何より、四輪がどっしり踏ん張っているのがいい。幅も1740mmと広がりましたが、ミラーtoミラーはそれほどでもない(片側で+12.5mm)という説明でした。
グレード構成はシンプルに3つ。上から順に2LターボのS−GT(4WDのみ)、2L自然吸気の 20S(4WDのみ)、そして1.5L自然吸気の15S(FFと4WD)。とりあえず出足は好調で、15Sが一番人気。続いてS―GT、20Sなのだそう。
まずは、15SのFFに乗ってみました。乗り込んですぐに気 づくのが、視界の良さ。フロントガラスが広々としている上、見切り線としてのボンネットラインがしっかり見えていて、Aピラーも手前にあるから、とにかく取り回しがいい。これはシティカーとして優秀だな、と早くも納得。
走り始めても、扱いやすいという印象は強まる一方です。加えて、まるでレガシィのような前半部分のしっかり感とコクピット内の静かさ、そしてハンドルの剛性感が、「こりゃ1.5Lのクルマちゃうな」、と。
けっこう興奮して、そのノリを一気に高めようとS−GTの AT(アクティウ゛トルクスプリット4WD)に乗り換えたら…。クルマとしては、基本的に15Sのよくできた線上にあって、しかも十分以上のパワーがあって速くていいのですが、いかんせんATがしょぼい。豪快な加速中には盛大にシフトショックをくれるし、町中でゆるゆる走っていても上滑りのようなシフトチェンジをかましてくれるし。ええな、ええなと思っていても、シフトチェンジのたびに幻滅。
もしやと思い、今度はビスカスLSD4WDの5MTに 乗ってみると。おうおう、これこれ、これがスバルのスポーツカーや!ってなノリで、音も加速フィールも4WDの曲がり方も楽しいことったら!この違いは何?と思いつつ、せっかくWRXイメージ を捨てたんだからオートマの方をもっとちゃんと造らないと、と思うことしきり。
MTなんて少数派で、そこにスバルらしさを残してくれたのは嬉しいけれど、だからってねえ。STIが出てきても売れるノーマルモデルの最上級グレードであるためには、走りの質感向上と、インテリアなどの 高級感アップが急務!だと思いましたね。
でも、ハンドリングは素晴らしいですよ!どっちも。
ちょっと落胆気味に、20Sに乗り換えてみると。これがまたいいんだよなあ。3グレード中、一番いいかもです。4ATもギリギリ気にならないかな、というレベルに収まっているし。レガシィがいらないかも、なぐらいにいい。
一番いいグレードが一番売れない。新しいインプレッサの課題がそこに隠れているんだと思いますね。