京都大学工学部精密機械学科卒業。自動車エンジニアを目指すべく、大学では機械工学を学ぶが何を間違ったか(株)リクルート入社。カーセンサーの編集に携わる。カーセンサー関東版副編集長を経て、現在カーセンサー編集アドバイザーを務める。フリーランスのライターとしても活動中。ほぼすべての新型車試乗をこなす。
結論から言うと『ブリテッシュ・ブランドは凄い!』である。
こんなことをいうと、クルマ事情を良く知る人ほど、首をかしげるかも知れない。曰く、「何言うてんのん、どいつもこいつも身売りされたとこばっかしやん」。曰く、「イギリスにはもう1つも民族資本ないねんで」。また曰く、「イギリス車ってマトモなイメージないもんな」。などなど。
だから、見るべきものはないんじゃないか……。大間違いである。
確かにイギリスのブランドは今やほぼ全て外国資本によって支えてられている。VW(ベントレー)、BMW(ロールスロイス、ミニ)、フィード(ジャガー、ランドローバー、インド・TATAに売却か?)、プロトン(ロータス)。フォード傘下にあったアストンマーティンはプロドライブの英国人デビット・リチャーズに売却されたが、それにしたって中東の金融&オイルマネーがメインだ。
要するに全て余所に買われてしまった。そして、そのまま裏がえせば、欲しいと手を挙げたところがあった。そこが、ミソだ。
結果、今、名だたるブランドたちの製品商品はどうなっているのか。よく見て欲しい。アイデンティティを失ってしまったブランドはあるか?不出来なクルマを造っているブランドはあるか?
ない。ぜんぜん、ない。
それって、実に素晴らしいことじゃないか!本物の文化性を有していれば、たとえ資本が外国からやってこようと崩れることがない。主張があって、尊敬も受ける。だから逆にグローバルにも立派に通用する。ただし、商品として成功するかどうかは、時代の流れや親会社の戦略などによって左右される。今のところ、ジャガーとランドローバーは苦しいけれども、次の親玉はどうやら相当に太っ腹(金は出すが口は出さない、たぶん出せない)のようだ。大いに期待できよう。
さて、本題のXFについて。
断言してもいいが、今、このクラス(欧州Eセグメントに属する)最高のスッポーツサルーンじゃないか。何かが突出しているのではなく、全ての性能が高いレベルでバランスしている。だから、運転していて常に気分がいい。ゆっくり町中を流していても、高速道路をクルージングしていても、ワインディングをかっとばしてみても、クルマは常にドライバーに忠実でよく手に馴染む。驚くほど、心地いいライドフィール。
V8の自然吸気(19インチタイヤ)とスーパーチャージャー(20インチタイヤ)に乗ったが、個体差はあるものの、おおむね同じ乗り味で、自然吸気でも物足りないということがない。充分だ。サウンド的には自然吸気の方が優るほど。絶対加速を求める方だけが、スーパーチャージャーを狙えばよろしい。
足回りはスポーツクーペのXKとほぼ同じ。ボディ構造はアルミではなくスチールがメインだが、それが逆に効いている。アルミボディ特有の“輪郭”がやけにくっきりした走りではなく、ある程度そこをゆるくぼかしてクルマ全体でしなりをつくり、人間の感覚に自然な雰囲気で力を漲らせている。そこが、いい。こういうことができるジャガーは、やっぱり凄いと思う。きっと、社内の“どこかで誰かが”ジャガーらしさを常にブラッシュアップしモダナイズしバージョンアップしながら厳しく今に伝えているからだと思う。そう、たとえ“親玉”が変わろうとも……。
とにかく、XFはドライバーズカーとして当代一流である。デザイン的に好みは分かれるだろうが(特に顔付き)、クルマなんてものはそれぐらいでちょうどいい。万人受けする必要などない。XKクーペと同じシルエットを描くキャビンデザインの美しさに惚れて、中身が最高であるということを誇りに思いながら乗って欲しい。そういうクルマだ。
とにかく、クルマ好きならば、XFシリーズの実力を知っておいて損はない。否、クルマ好きを標榜するならば、Eクラスや5シリーズを褒める前にXFシリーズの実力を知っておかねばならないと思う。好き嫌い欲しい欲しくない買う買わないは別にして、そこには今、最高のライドフィールがあるのだから!