それにしても、バルセロナまでが遠かった。実を言えば、レンタカーを借りようと言った時点で、私はマルセイユ~セビーリャ間をあって千キロちょいだとふんでいた。飛行機が飛んでいる時間が、1時間+1時間だったから、単純に東京~大阪×2=1000、と思い込んだのだった。 その思い込みが大いなる悲劇だったと知るのは、さらに12時間後のことである。 ほどなく、バルセロナまで350キロなどという、日本人を馬鹿にして...
Editor's Voice: 2007年6月アーカイブ
最初のインターチェンジで、早くも道を間違えて、高速道路をおりてしまった。こうなると、いっきに不安が募る。運良く、行きたい道と並行に走る一般路におりたので、細かな道路標識に従っていけば、もう一度同じ高速に乗れるはずだった。 「あ、そのランナバウト、11時の方向で高速です」。ヨーロッパの交差点はランナバウト方式である。時間で方向を示すのが、もっとも確実だ。 ふたたび高速道路に入ったが、ナビが行き先を失...
レンタルしたセアトアルテアは、もちろんマニュアルでディーゼルだった。こっちに異存はなかった。長い距離を走るといっても、ほとんど高速道路のはずだ。こきこき手こぎが、どれだけ辛いというのだ。今の我々の事態以上に辛いことはあるまい。 変わったデザインの割には、インテリアはフツウだなとそのときは思ったが、夜が明けてから改めて見ると、けっこう奇抜なインテリアだと知る。 そのとき、とんでもないことに気づいた。...
建物から最も近かったのは、はたしてハーツだったかエイビスだったか、定かではない。私はこれという理由もなく、さりとて躊躇うこともなく、グリーンの看板、ユーロカーを目指していた。たぶん、以前、イタリアで乗ったことがあるからかも知れない。 20時も回っているというのに、レンタカー会社の受付けには観光客がたくさんいた。カウンターで話し込むデイパックを背負った若者、大きな荷物とともに所在なげに視線を漂わせる...
すでに途方もなく途方にくれているわけである。しかも、中年男が重い荷物を引っ張ってのターミナル間移動ほど、人を寂しくさせるものはない。あえて話すべき会話のタネも見当たらない。 ただでさえ、人を早くどこかへ消し飛ばしたい飛行場の雰囲気に、夜のとばりが拍車をかけている。このまま残ってしまうと、とんでもない自体に巻き込まれるかもしれぬという、漠とした不安が、周りの人々をも包み込み始めているようだ。もちろん...
しょせん人間ってもんは、食って寝て出してれば生きて行けるわけで、欲求もみんなそれに絡んでるわな。中でも、食うってのは、稼げていることを「食っていける」っていうぐらいやから、まあ、一番大事。TV番組表みてみ、飯食う番組ばっかりやろ。 それにしても、彦麻呂さんは可哀想や。この前、なんかの番組に出てはるの見たけれど、もう悲劇的に太らはった。病気に見えるぐらい、痛々しい。ボクもメタボやけど、これは自分で好...
Y編集長と私は、仕方なく、扇形に広がった列とも言えない列の、ここが最後と思しき場所に陣取った。チェックイン時に私の後ろにいた中国人の団体は、すでに交渉を終えたのだろう、ブースの脇で談笑している。何ということだ。なぜ、俺たちだけをチェックインさせた。今更ながら、怒りが込み上げてくる。そして、私の荷物はどこだ、いったいどこなんだ?! 怒りのこもった一方通行の会話だけが前方から聞こえてくる。ゆっくり、一...
「あと1時間もあるんだよなあ。」 気分は、ラウンジ備え付けの高級リゾート仲介雑誌に山ほど載っている陽光燦々と降り注いだバカでかいプール付きの家々からのあざ笑いでひと際、暗く沈みつつあった。そういえば、我々以外にあれから誰もラウンジに入ってこないし、よく見ればいつの間にかモニターのデパーチャーリストから、我々が載るはずのマドリッド便の表示が消えていた。 なぜだ?? 事態の深刻さに気づかない、というよ...
スペイン行きはイベリア航空だ。マドリッドまでは聞いたことのないキャリアとの共同運行便だったと思う。人影もまばらなカウンターに並び、荷物を預けてチェックインを済ませ、身軽になった。この瞬間はいつも、勘違いだが晴れ晴れしい。 空港を使うということは、とかく面倒ごとのたまり場ではある。とはいえ、ここはこの先セビリャまでの様々な煩わしさと着いたときに感じるであろう疲労と安堵をひととき忘れ、我々は半ば意気揚...